クリスマスの風景 プレゼーピオ

イタリアのクリスマスに欠かせない風景は、イルミネーションだけではありません。
万国共通のクリスマスツリーより、ぐっと味わい深いイタリアの習慣、
プレゼーピオという人形とジオラマがつくりあげる、
ひな飾りのようなキリスト誕生の風景があります。
教会や家庭に飾られ、前日まで主のいなかった馬小屋に、
25日の朝、生まれたばかりのキリストの赤ちゃんが置かれます。

プレゼーピオの人形や飾り物は、クリスマスマーケットでも目にすることが出来ますが
(毎年少しずつ買いそろえていくのを楽しみにしている人もいるとか)、
この時期にイタリアにお出かけの方は、
町中や教会で見かけたら是非足を止めてみてください。
なかにはとっても趣向を凝らしたものや、興味深い風俗を伝えているものもあります。

また、ナポリのサン・マルティーノ美術館など通年展示している博物館や教会では、
美術品クラスのすばらしいプレゼーピオを見ることが出来ます。

写真はカゼルタの王宮内の展示室。
マリアとキリスト、天使や街行くの姿、様々な市井の人々の暮らしぶりが、
まるでルネッサンスの絵画のように生き生きと表現されており、見ごたえがあります。

 

シチリアのカルタジローネという街に出かけた時のことです。
タイルが張られた美しい階段を一段一段眺めながら上って、
下りは眼下のパノラマに目を奪われながら下りたところで、
小さな標識をみつけました。
カルミネ教会で動くプレゼーピオ展示中、というのです。
陶器が自慢の街だけあり、人形も陶器製だとあります。
時間を持て余し気味だった私は覗いてみることにしました。
路地の奥のひっそりとした教会でした。

さして広くない内部は、プレゼーピオの巨大なジオラマでほぼいっぱいです。
ぐるりと一回りしてしていると、たった一人の入館者のために、
係の人がライトをつけ、機械仕掛けの人形を動かしてくれました。
ロバや羊、畑を耕す農民や洗濯女など、皆自分の役割を思い出したかのように、
それぞれの仕事に励み始めるのです。
面白いなあと見ていたのですが、ふと、
これまでのプレゼーピオと違うものがあることに気が付きました。

洞窟のような馬小屋、キリストとマリアを見守る天使、東方の三博士、
世紀の一瞬にも、それと知らず野や台所や庭先で働く人々……、
その後ろや横に、たわわに実ったオレンジの樹(まるでひな壇の橘)、
そして赤い実をつけたサボテン。

オレンジはシチリアの特産として有名ですが、めずらしいのはサボテンです。
といってもこのサボテン、シチリアではいたるところで見かけます。
サボテンの実も、秋から冬にかけて果物屋に並びます。
そんな自分たちの日常世界が、しっかりと描き込まれたクリスマスの風景、
遠いベツレヘムが、いつの間にか村の庭先に出現したような親しみやすさ、
素朴な、記憶に残るプレゼーピオでした。

↑洞窟(馬小屋)の左上にもサボテンが

←庭先で作っているのはチーズ
ワンちゃんもサボテンもリアルでした

 

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