2017年は「小さな村(=ボルギ)」へ
イタリア政府観光局は、2017年の重要テーマのひとつに「ボルギ:小さな村」を選出しました。古い街並みがことのほか愛されているイタリアですが、ボルギはまた別格です。「イタリアの小さな村」と聞くだけで、懐かしさがかきたてられるような気がしませんか。既に一定のイメージが形作られているのだと思います。でも、「ボルギ」を単に村と訳してもどうもおさまりが悪い。少し詳しく見てみましょう。
ちなみにボルギ borghi は、単数 borgo の複数形です。よくボルゴ メディエヴァーレ(borgo medievale)と、「中世の」という形容詞と共に耳にすることが多く、ボルゴというのは、古くて、こじんまりとした村、あるいは集落というニュアンスで捉えていました。ところがこれを辞書で引くと、1.大きな村(町) 2.(都市や城壁外に発達した)郊外地区、新開地 3.(都市や村の)主に古い地区の通りの名称 とあり、思っていたのとも違うし、どうもピンときません。
BORGHI ITALIA というボルギに特化したツアーオペレーターのサイトは、こう定義しています。
ボルゴとは、前中世からルネッサンス時代に歴史をさかのぼる、独特の魅力を持つ小さな村を差します。一般的には、帰属する領主の館や城の周囲に、城壁に囲まれた集落として形成されたもので、イタリア全土に260か所が残っています。ボルゴは、芸術や建築から伝統的な食にまで至る、イタリアの文化遺産のシンボルなのです。
260の選定(認定?)の基準は不明ながら、この定義を読み、やっとすっきりしました。イタリアを車や列車で移動していると、よく丘の上や斜面に、壁や屋根が同じ色でかたまった、古びた集落を見かけます。そこにはたいてい教会と、(野辺の)仕事を終えて家に戻る夕刻に、あるいは帰郷する人々を迎え入れるように鐘を鳴らす、鐘楼があるのです。あれがボルゴでした。
I Borghi più belli d’Italia(「イタリアで最も美しい村」協会)がビデオを公開しています。
そして、たまたま今日、某サイトに投稿した私の記事も、ボルゴを紹介するものでした。ほとんどの観光客が、世界遺産であるブルボン王朝の宮殿を見学して終わるカゼルタですが、実は中世のボルゴが残っているのです。
宮殿から10キロほど離れた、今ではカゼルタヴェッキア(古いカゼルタ)と呼ばれる村は、正真正銘のボルゴ・メディエヴァーレ。9世紀の城と、12世紀のロマネスクの教会と、静かな石畳と石造りの家並みが残っています。
イタリア「カゼルタとカゼルタヴェッキア」~世界遺産の宮殿と中世の街
南イタリアには、個性的な自然景観と、イタリア中北部とは異る歴史を持つ、興味深いスポットが点在しています。歴史的には、中世からイタリアが統一される19世紀半ばまで王に支配されたことと、その王たちが皆異国からやってきたことが特徴です。新旧二つのカゼルタの「街」に、そんな900年に渡る「王国」史をたどってみましょう。
(中略)
多くの人が世界遺産であるカゼルタを訪れます。片やカゼルタヴェッキアは、忘れられた街のように見えます。では、今ではたった200人ほどしか住んでいない街に、レストランが何軒もあるのは何故でしょう。イタリアでは古い街並みや建物がとても大事にされていて、とくに中世の街はボルゴ・メディェバーレ(Borgo Medievale=中世の集落) と呼ばれ、地味な教会と崩れ落ちた城と石畳と石壁の集落だけであっても、いえ、それだけだからこそ、深く愛されているのです。村全体が国の文化遺産に指定されていますが、遺産を見学するためではなく、美味しい食事と景観と散策を楽しむために、繰り返し出かけていく場所として…。ずっと生き続けていく街の姿が、ここにあります。
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